No 016 御坂峠(山梨県)
 安房峠(長野県)

御坂峠(山梨県)

~太宰治著「富嶽百景」が生まれた
御坂峠にある天下茶屋 御坂峠にある天下茶屋
●山梨県富士河口湖町
●標高  1,525メートル

「富士には月見草がよく似合ふ」と言った太宰治の富嶽百景は、絶景の富士山を仰ぐ御坂峠で生まれた。峠にある天下茶屋に、文学者として先輩格の井伏鱒二が後輩の太宰を呼び寄せ、2ヶ月ほど逗留した。御坂峠に着いた当初の太宰は、銭湯のペンキ絵と揶揄していたが、朝な夕なに見る富士山は、苦悩する太宰を少しずつ癒していった。寒さも増してきた11月のある日、元気を取り戻した太宰は、天下茶屋の店主とその娘に頭を下げて峠を降りて行った。その後の作品は、「走れメロス」をはじめとした明るい作品に変わっていった。
 「私には誇るべきは何もない。才能もない。肉体よごれて、こころも貧しい。けれども苦悩だけは・・・苦悩だけは黙って受けていいくらい経てきた。たったそれだけ。藁ひとすじの自負である。けれどもわたしは、この藁ひとすじの自負だけは、はっきり持っていたいと思っている。」峠に逗留している作家、太宰治に地元の青年たちが面会にやって来る。青年たちに会ったときの心境を 述べたものだが「藁ひとすじの自負」は富士山に向かって咲く月見草と重なるものがあったと思える。
 

麓まで雪で覆われた冬の御坂峠 麓まで雪で覆われた冬の御坂峠
 雲ひとつない富士山は見事だった。名峰富士は、人を惹きつけ魅了し元気にする何かがある。

御坂峠map

★御坂峠へのアクセス

・中央道一ノ宮御坂ICで下車、国道137号(御坂みち)で河口湖方面へ、御坂トンネル手前を旧道に入り峠へ。

★周辺の見所

・天下茶屋の二階には太宰治が執筆した部屋が再現されている。著書の多くが陳列され見学できる。(冬季は閉鎖)


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