京都の中心街を車で走っている時は、片側5車線の大きな通りが、府道31号に入り、京見峠をめざし登る頃は、1車線のか細い道になっていた。昔は、西の鯖街道として、重要な役割を果たしたこの街道を、窮屈そうに車が通って行く。若狭の海で取れた、鯖を始めとした魚介類を背負い1日半かけて京まで歩く。遠い京までの最後の峠が京見峠である。ここを越えれば都の貴人たちが魚を高く買ってくれる。「京は遠ても十八里」と、若狭から、はるばる運ばれてきた。
鯖街道は、若狭路や周山街道の陸路や、琵琶湖を渡る海上ルートなど何本もあり、さまざまな路をリレー方式で運ばれたらしい。しかし、生の鯖は特に鮮度が落ちるのが早いので、塩を多くまぶし、夜も寝ずに運ばれた。着いた頃は塩が回りいい味になっていたという。