岩手県と秋田県のさかいに位置する見返峠は、十和田八幡平国立公園の中にある。八幡平(はちまんたい)という名は、その昔平安時代の武将、坂上田村麻呂が桓武天皇の奥州蝦夷征伐の命を受けこの地を訪れたさい、あまりの美しさに武運の神、八幡大菩薩の名を借り八幡平と名付け、武運を願ったとされる。
全長27kmの八幡平アスピーテラインと呼ばれる山岳道路を秋田側の鹿角から登って行く。途中、トロコ温泉、澄川温泉、後生掛温泉、蒸の湯温泉など、とにかく温泉が豊富な地である。温泉の商店街を過ぎるようであった。湯煙が立ちのぼる光景をながめながら高度を上げていく。アスピーテとは楯状の火山を言い、火山活動でマグマが噴出する際、マグマの粘度が高くゆっくり流れ出てくるため山の形状が西洋の楯を寝かしたように、丸みを帯びた姿を言う。針葉樹の林を抜けてワインディングロードを朝日に向って走って行く。まるで映画スターになった気分になれた。日本の山岳道路の中でも三本の指に入るほど爽快感が味わえる道路が、アスピーテラインだと知った。